かつては世界各国で、大地から食べ物を生み出す力は命を生む性である女性に備わっていると考えられていた。日本でも田植えは早乙女(さおとめ)と呼ばれる女性たちがする習わしだった。旧石器時代には女神信仰が存在し、13,000年前か5,000年前までの遺跡から発掘された神の像はみんな女神像だという。トルコで見つかった世界最古の都市チャタル・ヒュユクの遺跡(8,500年前)からは、大麦、アワ、女神像が出土しているが、この遺跡では、数千年に渡って争いが無かったことが判明している。エーゲ海のクレタ島では5,000年前から3,200年前まで女神文明が栄えていた。日本では青森県で、4,500年前から1,500年もの間定住し雑穀を栽培して平和に暮らしていた縄文時代の遺跡(三内丸山遺跡)が発見されている。多くの女性像(土偶)もともに発掘されている。
世界各地の先住民は、地球を母と感じ、母なる地球のエネルギーを分けてくれる聖なる食べ物として穀物を食べ、母なる地球の分身として女性を敬い暮らしてきた。
女は次代の生命を生み育てることと、地球のもたらす食べ物、特に地球のおっぱいである穀物を育てつなぐことの、2つの役割を担う生命体。そのために女には地球と交信してそこから知恵とエネルギーを受け取る受信機としての力が備わっていると思う。
雑穀は現代の女性にとって、なくしてしまった羽衣ではないかとこのごろ強く感じている。女が雑穀という羽衣をしっかりまとって天心で生きる天女に戻った時、やってくる未来に胸がふくらむ。
[出典元] 2004年11月「雑穀の書」つぶつぶグランマゆみこ著
[Photographer] 沼尻淳子