稀少な例外を除いて世界の主食は穀物だが、食べ方は大きく二通りに分けられる。粒のまま食べる方法と粉にして食べる方法だ。アジアは粒食、西欧は粉食というのが世間の常識だが、多くは混在型。古くは西欧でも粒粥(かゆ)が結構食べられていた。
粉の食べ方は、練ってパンに焼く方法と、練って麺やパスタにして茹でる方法、そして、粉を熱湯に振り入れて蒸し煮して切り分ける粉粥、の3通りに分けられる。パンは、お好み焼きやパンケーキからチャパティー、ナン、発酵したパンまでいろいろ、中国や日本では蒸しパンにする。麺はイタリアではパスタ、インドには蒸して食べる細麺があり、韓国には冷麺がある。パンや粉粥を主食にする国では粉を挽き割り、粗挽き数段階、粉、というようにテクスチャーをいろいろ楽しむ。
意外と知られていないが、粉粥は、アフリカやアメリカ先住民の多く、そしてインドでもヨーロッパでも広く主食として食べられてきた。アワの粉やキビの粉を熱湯に振り入れ、蒸らし煮して作る粉粥は、ルーマニアではママリガ、フランスではミヤ、イタリアではポレンタ、といい、古ヨーロッパ時代からの伝統主食だった。アフリカではシマ、ウガリといい、高キビやシコクビエで作った。チベットでは煎った麦の粉を練って食べる。日本のそばがきはこの粉粥の系譜をひく伝統食。
ソバ粉の特徴はぬるい水温でアルファ化すること。修験(しゅげん)者はソバ粉と味噌さえあれば生き抜けた。熱湯でさっと練るだけで食べられる手軽さはカップ麺以上、3分待つ必要もない。栄養価は天地の差、海苔とねぎとごまをトッピングして醤油をかければ完全栄養の一食になる。
[出典元] 2004年11月「雑穀の書」つぶつぶグランマゆみこ著
[Photographer] 福永仲秋