熱帯の産物であるスパイスは極端に陰性が強い。その陰性さで体を内側から冷やし、熱い太陽の降り注ぐ陽性の気候から体を守ってくれる。食べ物の腐敗を防ぐ殺菌作用も強力。インドなど暑い国の料理にスパイスがたくさん使われているのは、暑さにも、腐敗菌にも負けない食生活の知恵。カレーは体を冷やす夏の食べ物だということは覚えておいたほうがいい。
事実、日本のような温帯地域以北ではスパイスは生育することができない。体を冷やす陰性の食べ物は、熱帯でしか必要ないという自然の配慮だ。
近世になって陽性な肉を過剰に食するようになったヨーロッパでは、生理的バランスを取るために、異国からもたらされた希少なスパイスが珍重されるようになった。そして日本には戦後、肉食の習慣とともにスパイスが入ってきた。穀物中心の日本型食生活をしている人やベジタリアンがスパイスを多食すると、体調を陰性に偏らせてしまい、冷え性や貧血など体調を崩す大きな原因になる。スパイスは真夏にピリッと効かせて清涼感を楽しむのがよい。また、次のような働きを生かして少量を上手に活用するのも手だ。
1 タンパク質と脂肪の消化を促進する(脂肪の酸化も防ぐ)
2 体を冷やす
3 殺菌・防腐
4 動物性食品の臭み消しと解毒
5 風味とともに食欲を高める
6 心と体の緊張を解く
7 血管を緩めて血液の流れを良くする
中性な穀物・もちアワが主役のアワカレーは、体を冷やし過ぎないのがうれしい。
[出典元] 2004年11月「雑穀の書」つぶつぶグランマゆみこ著
[Photographer] 福永仲秋