雑穀に対してネガティブな先入観を持った現代人に雑穀がおいしいことを知らせるためには、まずその1、「わっ、おいしそう。食べたい!」と惹き付ける見た目の魅力が大切なポイントになる。いくら、栄養価が高いとかバランスが良いと言われても、食はきわめて感覚的かつ生理的な営みなので、不味いというイメージとともに食べるのは無理がある。色の取り合わせ、形、ボリューム感、盛りつけを工夫して、先入観が吹き飛ぶ見た目の魅力を演出するように心がけている。
そしてその2は、一口食べたとたんに「うまい!」と感じてもらうこと。刺激的な味つけや肉の歯ごたえに慣れてしまっている人には、素朴な雑穀のおいしさを感じるにはやや時間を要する。単に甘さやしょっぱさという味ではなくて、人は香りや、歯ごたえ、舌触りなどの食感も含めて味を感じる味覚を持っている。本当に満足するおいしさには食感の演出が欠かせない。むっちり、とげとげ、プルン、ごつごつ、ツルン、シャキッ、コリッ、ほっこり、とろとろ、プチプチ。アクの強いもの、すじばったもの、渋みや苦みのあるものなどなど。野菜、海藻、木の実、種子、豆、果物、粉、穀物たちは、それぞれ特有の食感とうま味を持っている。それらを上手に組み合わせるだけで、無限のおいしさが作り出せる。口に入れたとたんに口の中ではじけるおいしさ、舌に歯に脳に細胞に、旨さの感動を響かせるおいしさがつぶつぶ料理の大きな魅力だ。
最後の仕上げその3は、栄養バランスのデザイン。それは食と命のバランスシートをガイドに、食のピラミッドに添うだけなので簡単。食のデザインは人間にとって根元的に必要な分野ではないかと、このごろ真剣に考える。
[出典元] 2004年11月「雑穀の書」つぶつぶグランマゆみこ著
[Photographer] 福永仲秋