枕でおなじみの「そば殻」をむいたソバの種子が粒ソバ。実ソバともいう。水稲と同じく中国の雲南省がルーツといわれるソバは寒冷地や痩せ地で栽培できるタデ科の穀物。春蒔きで8月に収穫する夏ソバと、夏に蒔いて秋に収穫する秋ソバがある。寒いところのほうがおいしいソバが穫れる。近年、そば打ちがブームになり、有機栽培のソバ粉にこだわる蕎麦屋が全国にできている。日本でメジャー穀物として残った唯一の雑穀。
胚芽が中心にあるという個性的な粒で、タンパク質と脂肪は米の2倍含まれ、微量栄養素の種類が多い。心臓病を予防するルチンに富んでいることが近年注目され、生活習慣病予防の健康食という認識が広まった。紫系のポリフェノールにも富み、肝臓や毛細血管を強くする働きもある。
13世紀、チンギス=ハンのモンゴル帝国統一で世界に広まり、ヨーロッパ、ロシア、ポーランド、インド、ネパール、アメリカ、カナダと広く栽培されている。フランスではソバ粉のクレープや、ガレットがよく知られている。ロシアでは粒ソバをカーシャと呼び、ボルシチにする。ネパールにはソバ粉で作るソーセージがある。日本には8世紀頃に伝わった。山形県ではソバ米といい、ソバ米入りの汁や雑炊が郷土食として伝わっている。
粒ソバはさっと煎り水を加えて煮るだけで、簡単に炊ける。ツルッとした食感でコシがあり、微かにソバの香りがする。粒マカロニとしてサラダやグラタンに活用したり、脂肪とタンパク質が多いので、脂身の多いミンチに見立てて活用できる。愛称はポークミレット。
[出典元] 2004年11月「雑穀の書」つぶつぶグランマゆみこ著
[Photographer] 福永仲秋