アマランサスは雑穀の仲間だがイネ科作物ではなくヒユ科ヒユ属。中央アメリカ、南米アンデス原産。色もカタチも大きさもケシの実そっくりの小さな粒。とうもろこし、いんげん豆とともに日々の食卓に欠かせない作物、神聖な穀物として大切に栽培されてきた。乾燥に強く、畑の畦(うね)や急傾斜地などで育つタフな作物。白米と比べて食物繊維は8倍、カルシウムは28倍、鉄分は50倍、米に不足しているリジンも数倍含まれるのでアミノ酸の吸収率は抜群。若い間引き苗は野菜としても食べられ、ほうれん草と比べるとカルシウムは7倍、鉄分は2倍含まれる。
19世紀初めに神の穀物としてインド、ネパールに伝わった。ヒンドゥー教で断食明けに食べられることが許されている唯一の穀類で、祭りには菓子が作られる。チベットでは法要の供物とされる。
日本には江戸時代に当初は観賞用として入ってきた。呼び名はセンニンコク、ヒモゲイトウ。その名のとおりケイトウの仲間で赤い情熱的な穂をつける。赤い色は畦に植えると鳥よけの効果もあるという。殻がないので実を落とすとすぐ食べられる。全米科学アカデミーは、食糧危機対策作物として紹介している。
粒の特徴の1つは、簡単にはぜてポップになること。欧米ではポップがヘルシーシリアルとして売られている。少しビターな小さなポップを飴で固めて作るおこしはおいしい。
もう1つの特徴は炊くと独特の強い香りがすること。干しきのこや生姜など、香りの強い野菜と炊き合わせると匂いが気にならなくなりうま味もアップする。炊いても水分でふやけず、キュッとした歯ごたえのあるプチプチ感が残る。
[出典元] 2004年11月「雑穀の書」つぶつぶグランマゆみこ著
[Photographer] 福永仲秋