人類は400万年前にアフリカ大陸の東、今のエリトリアの地に生まれたというのが最近の定説になっている。この夏訪れたエリトリアの博物館には、120万年前の女性の頭蓋骨が発掘されたニュースが掲げられていた。ヒトの食性を生物学的に分析すると「平爪、臼歯が多く咀嚼型のあごの動き、でんぷん分解酵素の活性が一番高い、長い腸、嗅覚が弱く足も遅い」などの特性から、でんぷんを多く含む穀物と芋を中心とした菜食と推定されるという。事実、アフリカ原住民のほとんどは、穀物、芋、豆を中心とした菜食で強靱な体力と健康を保っていた。狩猟民族として名高いケニアのマサイ族でも食料の八割以上を植物に依存しているという。アフリカ大陸は高キビ、シコクビエ、トウジンビエ、アフリカ稲、フォニオ、テフなど、多様な穀類の発祥地でもある。
霊長類は、進化するにつれて菜食度が高くなり、人間に一番近いゴリラは100%菜食、木々の新芽を摘み、草の新芽を土中から掘っている姿は人間と変わらない。霊長類の頂点に立つ人間は菜食が自然らしい。
人間の歩く速さは一時間におよそ4キロ、相当の健脚でも、朝早くから速足で歩き回ったとして、一日で帰ってこられる広さは半径16キロ以内。昔の人が「四里四方の食べ物を食べると健康になる」といった範囲の食べ物でヒトはちゃんと生きられることは歴史が証明している。ヒトは、季節季節の山野草や地野菜を食べて季節の気候に適応する力をもらって生きてきた。
タイで出会ったカレン族の暮らしの基本は、7〜10年サイクルで循環させる焼き畑の管理と運営。新しく開いた焼き畑に80種類もの種を植えるのは女性の役目。彼女たちは、焼いた後の土の味で、どの種をどこに蒔けば良いかわかるという。
[出典元] 2004年11月「雑穀の書」つぶつぶグランマゆみこ著
[Photographer] 福永仲秋