「つぶつぶ」は、10数年前にわたしが雑穀につけた愛称だ。はじめて雑穀の存在を知ってから20年以上になる。当初は、色とりどりのかわいい粒たちの存在と、深いおいしさに感動し、その魅力を伝えようとしても、雑穀と聞いただけでネガティブなイメージを持つ人がほとんどで、全く何のことか分からない無関心派や、自分には関係ない大昔の貧しい食べ物というとらえ方が大多数だった。なんとか雑穀の生命力あふれるおいしさを伝えたいと、一粒に秘められた生命創造の力の話を繰り返しているうちに、雑穀のことを「つぶつぶ」と呼んでいた。そして、「つぶつぶ」と呼ぶようになったら、雑穀という言葉に染みついていたネガティブなイメージや重さが消えて、興味を持ってポジティブに受け止めてくれる人が増えた。ピンときて、雑穀が主役の創作料理を「つぶつぶクッキング」と呼ぶことにした。ファンの輪が一気に広がり、雑穀の社会認知度はぐっとアップした。
その謎が最近解明された。なんと、「つぶつぶ」は平安時代には生命力あふれる豊満な美しさを形容する言葉として使われていた言葉だったのだ。源氏物語では「つぶつぶと」という形容詞で、女性の豊かな胸や豊満な姿態を表したり、赤ちゃんや小さな子に対して、「つぶつぶと肥えて白う美し」と形容している。
「つぶつぶ」という言葉に、はじける生命力、内からみなぎるまろやかなおいしさ、美しさを感じたのは、日本人の遺伝子がカラダに組みこまれている証拠だろうか?
[出典元] 2004年11月「雑穀の書」つぶつぶグランマゆみこ著
[Photographer] 中野博安